青山エレベーター様の自社エレベーター遠隔化事例を公開
自社製エレベーターを、自分たちの手でクラウドにつなぐ
青山エレベーター株式会社|obniz Now 導入事例
エレベーターは、とまってはいけない設備です。しかし、とまってから駆けつける保守から、とまる前に異変を掴む保守へ──。愛知県を拠点に60年近くエレベーターと向き合ってきた青山エレベーター株式会社では、自社製エレベーターをクラウドにつなぐためのIoT化を、株式会社obnizの「obniz Now」で実現しました。「結構、楽しんでやれていました」と語る、現場発のIoTプロジェクトの記録です。
お話を伺った方
青山エレベーター株式会社 保守課 課長 森藤 様
設計・製造・工事・保守を一貫する、独立系のエレベーター会社
青山エレベーター株式会社は、昭和41年(1966年)創業のエレベーター会社です。設計・製造・据付工事から保守・メンテナンスまでを一貫して手がける独立系の事業者として、ものづくりが盛んな愛知県を中心に、東海3県でエレベーターを支えています。
お客様は実に幅広く、製造業が盛んな愛知県という地域柄、自動車関連企業に納める大型の荷物用エレベーターも手がけています。一方でメンテナンスについては、マンションや雑居ビル、町工場まで、業種・規模を問わず多岐にわたります。
加えて、自社製エレベーターだけでなく、他メーカー製のエレベーターのメンテナンスもすべて対応しているのが、青山エレベーターの大きな特徴です。
今回お話を伺ったのは、保守課 課長の森藤様。10年ほど前に同社に中途入社し、現在は保守全般、メンテナンス、故障対応、部品交換まで、現場の最前線を担っています。
「自社のエレベーターに対応したIoTがほしかった」
エレベーター業界には、メーカー系(三菱・日立・東芝・フジテックなど)と、青山エレベーターのような独立系の事業者があります。独立系事業者の集まりに参加するなかで、森藤様には一つの課題感が芽生えていました。

「周りの会社はもう、IoTで遠隔監視を取り入れていました。うちの会社にはまだそれがなくて、そろそろやらないと、と感じていたんです」(森藤様)
きっかけになったのは、メーカー製エレベーター向けの遠隔監視装置を提供している会社に相談し、試しに取り付けてみた経験でした。「遠隔でこれだけのことが分かるのか」という発見があった一方で、課題も見えてきました。
「メーカー製の遠隔装置は、機種によって対応している・していないがあります。仮に対応機種すべてに付けたとしても、台数は知れている。それよりも、自分たちが何百台も見ている自社製のエレベーターにこそ、対応したものを付けたかったんです」(森藤様)
そこで、自社製エレベーター向けに開発してもらえないか遠隔装置の会社に相談したものの、よい返事は得られませんでした。
サーバーいらずのクラウド型 ── 夜間自宅待機の現実にフィット
その時期、別の選択肢も検討していました。しかし、ほとんどが自社の事務所にサーバーを置いて確認するタイプで、青山エレベーターの保守スタイルとは相性がよくありません。
「うちは、夜間は自宅で待機する体制なんです。事務所にあるサーバーを見に行かないと状況が分からないやり方では、ちょっと難しいなと」(森藤様)
そんなタイミングで、obnizから一本の電話が入りました。
「正直、最初はちょっと突然だったので、何のことかよく分からなかったんです(笑)。たまたま事務所にいたので、私が電話を受けて。それが始まりでした」(森藤様)
obnizはクラウド前提のサービスです。サーバーを置く必要がなく、自宅からでも、夜間でも、状態を確認できる──。話を進めていくうちに、森藤様の中で手応えが膨らんでいきました。
「話を重ねるうちに、うちのエレベーターでも、以前使用していたメーカー対応の遠隔装置に近いことができそうだと思えてきたんです。それで社内に対しても、obnizを推していきました」(森藤様)
「孤独でしたが、楽しかった」 ── 現場担当者主導のIoT開発
このプロジェクトは、ほぼ森藤様一人に任される形で進みました。社内でIoT開発が初めての試みということもあり、会社全体が多忙を極めておりその中で他に対応できる人間もいない中での挑戦でした。
「途中からはもう、1人で勝手にどんどん進めていきました。そっちの方が早いなと思って。報告は要所要所で。」(森藤様)
何よりも、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)の世界が広がっていく面白さがありました。
「PLCの知識を勉強しながら、色々と発見があって。こうすればこういうことが分かる、じゃあこっちもこうすればもっとできるんじゃないか、と。当時はずっとネットで調べながらでしたが、知識が広がっていくのが楽しかったですね。今でも、もしかしたらこういうこともできるんじゃないか、と考えています」(森藤様)

obnizチームについても、こんな言葉を残してくださいました。
「ここまでのエレベーターの案件は、obnizさんとしても初めてだったと思います。細かい注文も結構投げたと思うんですが、一生懸命やってくださっているのを感じました。時間はかかるかもしれないけれど、満足のいくものが作れる──そう早い段階で確信できました」(森藤様)
「見えなかったエラー」が、見えるようになってきた
青山エレベーターの自社製エレベーターでは、乗場の操作盤に階数が表示されており、故障が起きると番号でエラーが表示される仕組みになっています。これまでは、お客様からの電話越しにこの番号を聞き取り、経験則で部品や工具を用意して現場に向かう──というのが故障対応の基本でした。
obniz Nowを導入してからは、この景色が変わり始めています。

1. これまで掴めなかったエラーが見えてきた
取得データを継続的に見ていると、これまでまったく報告に上がってこなかった種類のエラーが現れてくるようになりました。「こういうことが分かるだけでも、十分価値があります」(森藤様)
2. 「監視している」と言える安心感
ある現場で課題が見えてきた際、急遽obniz Nowを取り付けて状況を確認する対応を取りました。「こうした装置を付けて監視しています、とお客様にお伝えできるだけでも、向こうの受け止めは違ってくるんです」(森藤様)
3. 初の「IoT保守」契約を獲得
そして2026年5月──。青山エレベーターとして初めて、IoT保守の正式契約を1件受注することになりました。「これが、契約の1号になります」と森藤様。残り2件への対応を経て、青山エレベーターのIoT保守は正式リリースを迎える予定で、その後は大量導入のフェーズに入っていきます。
月50件の緊急対応、東海3県、片道1時間半 ── 保守の現実
なぜIoT化がこれほど効くのか。それは、エレベーター保守の現実を知ると見えてきます。
定期巡回は1台あたり約1時間。1日のスケジュールは、繁華街エリアの契約物件を中心に組まれますが、担当エリアは東海3県にまたがり、ピンポイントで遠い物件もあります。「例えば中津川のような遠方だと、移動だけで往復3時間です」(森藤様)
そして、定期巡回をこなしながら受ける緊急対応は、夜間も含めて月およそ50件。電話を受ければ、その日の予定を組み替えて駆けつけます。
部品調達も大きな課題です。半導体不足のときには注文してから入荷までに1年半を要した部品もあり、現在も長いと半年待ちのものがあります。それでもエレベーターを止めるわけにはいかないため、過去に交換した部品をストックしておく予防保全で対応しているといいます。
人材育成についても、現場の声は率直です。
「今は、若手にもベテランにもそれぞれ現場を任せて、1人で動いてもらっています。分からないことがあったら聞いてね、というスタイルですね。育つ人しか育たないやり方になってしまっているのが、課題です」(森藤様)
中途採用が中心で、未経験者も少なくありません。技術と勘所をいかに引き継ぐかは、業界共通の宿題です。
こうした現場にこそ、データの力は効いてきます。電話越しにエラー番号を聞き出さなくても、装置から直接届く。出向く前に状況が把握できる。経験則の補助線として、IoTが現場を支えていく──そんな未来図が、すでに動き始めています。
自社製エレベーターのIoT化を、自分たちの手で


青山エレベーターの取り組みが示すのは、現場を最も知る担当者が主導する、自社製品のIoT化という姿です。メーカーの提供する遠隔装置を待つのでも、汎用的な解決策に合わせるのでもなく、何百台と向き合ってきた自社のエレベーターに、自分たちの手で最適なIoTを実装していく。
PLCを学び直し、ネットで調べ、obnizと一緒に細かい仕様を詰めながら、一歩ずつ進めてきた森藤様の言葉には、現場発のものづくりが持つ確かな手応えがにじんでいました。
obniz Nowは、既存の機器に変更を加えることなくネットワーク接続を実現するIoTデバイスです。エレベーターのように人命に関わり、24時間365日止まれない設備においても、現場担当者の手で自社製品ならではのIoT化を進めていける──青山エレベーターの事例は、そんな可能性を示しています。
会社情報
青山エレベーター株式会社
創業:昭和41年(1966年)
事業内容:エレベーターの設計・製造・据付工事・保守メンテナンス
対応エリア:愛知県を中心に東海3県
